ホメオパシー/ gift

2015年7月、世界161ケ国のボーイスカウト3万4千人が日本の山口に集まり、12泊に及びキャンプサイトで生活した。ボーイスカウトとは青少年教育の2本柱のうちの1つ、社会教育の主軸を担う活動であり、今大会には日本の文部大臣は当然、国連(UN)の事務局長や国連青少年特使も参加された。

参加国の中にはイギリス・フィンランド・ドイツなどヨーロッパ先進国はもちろん、日本の真裏の南米、そして正式な国交がない台湾も「自国の名前を開会式では呼ばれない」という不待遇があるにも関わらず参加、現在も国内問題を抱える多くの国も招待国として参加した。

そして閉会式では

「文化や人種の違いを理解し、それらを超え、世界平和を築くために、今大会での友情をいつまでも大切にしてほしい」

との国連事務総長からのメッセージも届けられた。

 

この世界大会は4年に1度開催されており、そこに関わるスタッフは基本的にはボランティア。ボランティアはIST(international service team)という奉仕隊に応募する。ISTは日本国内からだけではなく、参加国のほとんど全ての国からやってくる。私が空港で出会ったISTもヨーロッパ圏の20代前半の若者や、既に社会的に成熟した威厳あふれるアジア圏の男性たち、飾らない雰囲気で子供たちを見守る「お母さん」的雰囲気のフィリピンや韓国の女性、日本国内に居住する外国人など、ぶ厚い層で構成されていた。

 

つまり平和や友情、国際理解やボランティアのために、人々が世界各地から自分の仕事も休み、学校も休んでやってくるのだ。

 

なぜこんな事が実現可能なのだろう。

 

私はここでネパールからのISTスカウト、Prakash Raj Pandeyと出会った。

彼はネパールの山岳協会所属の山岳ガイドをつとめるボーイスカウト。ネパールの山々をトレッキングするうちに、ネパールの山おくに捨てられた子どもたち、障害児、多くの貧困、栄養失調を目の当たりにした。

そして、この子供たちのために時間とお金、体力を注ぎ込んできた。

(彼の活動は Hands for Creating a Better Nepalで紹介)

 

そもそも貧困の中にあったネパールに未曾有の大地震が起こったので、彼の本業である山岳ガイドも立ち行かないが、それでも彼は子供たちへの支援を休んではいない。

 

私はここに「ホメオパス」を見た。

真に問題を解決する人、本当に必要なものを黙って差し出す人、それがhealing artを行うホメオパス。


私の敬愛する哲学者・中沢新一は「ギフト」というものについて語っている。

 

直線的な資本主義の問題を解決するには、ギフト(贈与)しかない。

 

ネパールの人がいくら働いても、震災から復興するには莫大な年月がかかり、さらにその過程で一番犠牲を強いられるのは最も弱い子どもたちだ。 この局面において、私達先進国に住む人間は「寄付(donation)」ではなく、ギフトの概念で彼らに無償の愛を贈るべきなのではないだろうか。

持てる者と持たざる者の間を埋めるのは、発展途上国の経済発展ではなく、持っている者が譲ること、それしかない。

 

前記のような思いを胸に

当協会は2015年の売り上げ(版権契約分を除く)をネパールの子どもたちへの基金に贈る事にする。